2013年2月26日火曜日

2013.02.26 永江 朗 『筑摩書房それからの四十年』


書名 筑摩書房それからの四十年
著者 永江 朗
発行所 筑摩書房
発行年月日 2011.03.15
価格(税別) 1,800円

● 筑摩書房の社史。「それからの」というのは,「倒産後の」ということ。
 社史を自社で編纂するのではなく,外部のライターに書いてもらうというのは,そうそうないことだと思う。結果,読みものとして耐える内容に仕上がった。お金を払って読んでもらえる社史になった。永江さんの技量による。

● 印象的なのは,やはり倒産前後のところ。当時の経営陣の不甲斐なさ。文学青年あがりの理想主義者が,現実の経営者としてはいかに無能であるか。為す術はあったのに,ほとんど何もしないで傍観していた感じ。
 永江さんといえども,発注者に対する遠慮はあるだろう。思いの丈を吐きだしているわけではないだろう。それでも,何だこれは,と呆れかえっているように思われる。
 想像をたくましくすれば,創業者の古田氏に対しても,永江さんとしては言いたいことがあったような。そこは見事に筆を抑えているけれども。

● 筑摩書房の歴史をたどることは,戦後の出版界のあれこれや,文学や出版物の栄枯盛衰,思想の流行り廃りを概観することでもある。
 大げさにいえば,日本戦後史でもある。そういうものとして本書を読むこともできる。というか,そういうものとして読めることにこそ,本書の価値がある。

● 本書が面白いのは,筑摩書房にいた個人を前面に出しているからでもある。もともと大きな会社ではない。個人が見えやすい。それでも,永江さんに与えられた時間はさほど長くはなかったようだ。短期間でここまでやれるのは驚異だ。

● 昨今の新書創刊ラッシュについて,永江さんは苦々しさをもってながめているらしい。「出版界の新書ブームは終わらず,新規参入はまだ続いている。しかし,新書市場そのものの拡大はない。正直いって,新書全体の企画はかなり荒廃している」(p252),と。

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