2013年2月8日金曜日

2013.02.08 音楽之友社編 『黄金時代のカリスマ指揮者たち』


書名 黄金時代のカリスマ指揮者たち
編者 音楽之友社
発行所 音楽之友社
発行年月日 2012.08.01
価格(税別) 1,600円

● 往年の名指揮者を,わが国を代表する音楽評論家が回顧する。もちろん,褒め称える内容になっている。そうじゃなかったら出す意味もないだろうし。
 取りあげられている指揮者は次の20人。
 ・フルトヴェングラー
 ・トスカニーニ
 ・ワルター
 ・クナッパーツブッシュ
 ・ムラヴィンスキー
 ・メンゲルベルク
 ・モントゥー
 ・シューリヒト
 ・ストコフスキー
 ・アンセルメ
 ・クラウス
 ・クレンペラー
 ・ミュンシュ
 ・カール・ベーム
 ・ジョージ・セル
 ・オーマンディ
 ・バルビローリ
 ・マタチッチ
 ・朝比奈 隆
 ・ヴァント

● 冒頭にドナルド・キーンさんのインタビュー記事が掲載されている。フルトヴェングラーやトスカニーニの指揮や全盛期のマリア・カラスの舞台を観たこともあるそうだ。
 「人間は年とともに多くの変化をくぐり抜けますが,一つだけ変わらないものがあります。それは「声」なのです。誰かが私に三十年ぶりに電話をかけて来ても,誰であるか大体わかります。声には変わらぬ個性がありますから。(中略)ですから昔の演奏を聴くと古い友達に再会したような喜びがあります。それはつまり,「声」こそがすべての音楽の基本であるからです」(p15)という。

● 先生方が思い入れのある指揮者について語るわけだけれども,皆さん,子どもの頃からクラシック音楽に接しているんですな。比較しても仕方がないことながら,自分のスタートのあまりに遅いことを悔やむ気持ちがきざしてしまう。
 少なくとも小学校の音楽の時間に何らかの曲を聴いた(聴かされた)ことは間違いない。音楽室があって,作曲家の肖像画がズラッと掲げられていたのは記憶しているからね。
 が,それだけしか憶えていませんね。何かを聴いてインスパイアされたなんてことはなかった。これがつまり,凡人の凡人たるゆえんなのだと思うけど。

● ポツポツと聴くようになったのは大学生になってからかなぁ。ラジオのFMから流れてくるのをカセットテープに録音してね。その頃は,作曲家の名前と曲名にしか思いが至らなくて,指揮者や演奏者が誰かなんて考えもしなかった。凡人たるゆえん。先生方とは違いますな。

● 先生方の少年時代の回顧録を読んでいると,パソコンの黎明期にパソコンをいじっていたオッサンの話を聞いているような気分にもなる。
 ハードもソフトも高価で,性能も今とは比較にならないほど貧弱で,その代わりパソコンってすげぇなぁと単純に感嘆することができて,使えるようになるにはハードルが高かった頃。その頃からパソコンに触れていた人と,Windows95以降にパソコンを使いだした人とでは,パソコンに対する気持ちが違うだろう。前者の人たちにとっては,パソコンは道具以上というか,自分の分身のように感じている人がいるかもしれない。後者にいわせれば,パソコンは単純に便利な道具に過ぎないだろう。特別なものではない。
 同じように(と言っては失礼かもしれないけれども),先生方にとっては,クラシック音楽は自分の一部,切り離されれば血が噴きだすような存在になっているのだろう。一方,CDがあたりまえになってから,さらにはiPodで聴くのが普通になってからの世代には,音楽じたいがずっと軽いものになっているかもしれない。精魂こめて議論するようなものじゃないでしょ,的な。

● 先生方が絶賛してやまない,たとえばフルトヴェングラーがバイロイト祝祭劇場で指揮したベートーヴェン「第九」のCDを聴いても,悲しいことに,ぼくの体はほとんど感応しない。
 もちろん,修行が足りないのだと思う。耳が悪いのだと思う。聴く体験の絶対量が足りないがために,演奏が持つ「精神の高さ」や「音楽の輝きの光度の強烈さ」や「そこに含まれる闇の深さ」を感知することができないでいるのだと思う。
 だが,一方で,呼吸をし始めた時代の空気が違うせいだとも思う。文学でも社会科学でも「古典」は多数存在するけれども,その「古典」が生まれた当時の読まれ方と,現在の読まれ方はまるで違っているはずで,音楽の演奏もまた同じと考えたくもある。

● っていうか,録音のまずさっていうのがねぇ。これ,普通に言われているよりも,影響,大きくない? どんな名演でもあの録音じゃちょっとなぁって思わない?
 そこがダメなんだよと言われそうだけども,あの録音に耐えられる人ってのは,SPレコードの録音の悪さを経験している人なんじゃないかなぁ。聴き始めたときにはCDだったという人にとっては,昔のパソコンで今のソフトを動かしているようなもので,どうにもこうにもならないと感じるのではないか。

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