2015年2月15日日曜日

2015.02.13 エリック・シュミット ジョナサン・ローゼンバーグ 『How Google Works 私たちの働き方とマネジメント』

書名 How Google Works 私たちの働き方とマネジメント
著者 エリック・シュミット
    ジョナサン・ローゼンバーグ
    アラン・イーグル
訳者 土方奈美
発行所 日本経済新聞出版社
発行年月日 2014.10.08
価格(税別) 1,800円

● 読みごたえがあった。働き方といいマネジメントといっても,まずは傑出した人材を確保することから始まる。Googleの言葉で「スマート・クリエイティブ」という。
 スマート・クリエイティブとは,次のような人である。
 納得できないことがあれば,黙ってはいない。退屈しやすく,しょっちゅう職務を変える。多才で,専門性とビジネススキルと創造力を併せ持っている。(p35)
 その共通点は努力をいとわず,これまでの常識的方法に疑問を持ち,新しいやり方を試すことに積極的であることだ。(p38)
 単に親切で信頼感があるというだけでなく,多才で,世界と深くかかわっている人間,つまり「おもしろい」人間だ。(p150)
 私たちが知っているなかでもとびきり優秀で,しかもとびきり忙しい人は,たいていメールへの反応が速い。私たちなどごく一部の相手に限らず,誰に対してもそうなのだ。(p259)
● Googleの「採用のおきて」が紹介されている(p186)。ここで「採用せよ」とされているのがスマート・クリエイティブなのだろうけれども,途方もない人ってことだ。
・自分より優秀で博識な人物を採用せよ。学ぶもののない,あるいは手強いと感じない人物は採用してはならない。
・プロダクトと企業文化に付加価値をもたらしそうな人物を採用せよ。両方に貢献が見込めない人物は採用してはならない。
・仕事を成し遂げる人物を採用せよ。問題について考えるだけの人物は採用してはならない。
・熱意があり,自発的で,情熱的な人物を採用せよ。仕事が欲しいだけの人物は採用してはならない。
・周囲に刺激を与え,協力できる人物を採用せよ。ひとりで仕事をしたがる人物は採用してはならない。
・チームや会社とともに成長しそうな人物を採用せよ。スキルセットや興味の幅が狭い人物は採用してはならない。
・多才で,ユニークな興味や才能を持っている人物を採用せよ。仕事しか能がない人物は採用してはならない。
・倫理観があり,率直に意思を伝える人物を採用せよ。駆け引きをしたり,他人を操ろうとする人物を採用してはならない。
・最高の候補者を見つけた場合のみ採用せよ。一切の妥協は許されない。
● 採用プロセスに関しては,上記の最後が黄金律とされているらしい。
 採用には絶対に侵してはならない黄金律がある。「採用の質を犠牲にしてまで埋めるべきポストはない」だ。(p177)
 じっかり胸に刻んでおこう。ダメ社員を解雇するような不愉快な事態を避けるには,最初から彼を採用しないのが一番だ,と。だからグーグルでは,採用プロセスを厳格にすることで偽陰性(本当は採用すべきだったのに,採用しなかったケース)が出るほうが,偽陽性(本当は採用すべきではなかったのに,採用したケース)が出るより好ましいと考えている。(p186)
 最高の従業員は群れのようなものだ。お互いについていこうとする。最高の人材を何人か確保できれば,その後まとまった数を確保できるのは間違いない。(中略)スマート・クリエイティブが集まってくるのは(中略)最高のスマート・クリエイティブと一緒に働きたいからだ。(p143)
● イノベーションが大事とはいうものの,当然ながらこうすればイノベーションを起こせるというノウハウはない。
 イノベーションが生まれるには,イノベーションにふさわしい環境が必要だ。イノベーションにふさわしい環境とは,たいてい急速に成長しており,たくさんの競合企業がひしめく市場だ。からっぽの市場にひとりぼっち,というのは避けよう。(p283)
 まったく新しい,ライバルのいない“未開の地”を夢見る起業家は多い。だが,からっぽな市場にはたいていそれなりの理由がある。企業の成長を維持するだけの規模がないのだ。(p283)
 イノベーションは自然発生的なのだ。原始スープから生まれる突然変異のように,生まれ落ちたアイデアが長く危険な旅路の末に,ようやくたどり着く目的地がイノベーションだ。(p286)
● 優れたプロダクトを生みだすために必要なもの。スピード,大きく考えること。
 劇的に優れたプロダクトを生み出すのに必要なのは巨大な組織ではなく,数えきれないほどの試行錯誤を繰り返すことだ。つまり成功やプロダクトの優位性を支えるのは,スピードなのだ。(p32)
 「世に出してから手直しする」。勝つのはこのプロセスを最も速く繰り返すことのできる企業だ。(p320)
 大切なのは顧客の要望に応えることより,顧客が思いつかないような,あるいは解決できないと思っていた問題へのソリューションを提供することだ。(p107)
 インターネットの世紀には,誰もが無限の情報,リーチ,コンピューティング・パワー,グローバルなスケールを手に入れることができる。だが,私たちは従来型の小さな発想にとらわれがちだ。「発想が小さすぎる」という指示は,そうした姿勢を正すのに役立つ。(p296)
 携帯電話がミシンほどの大きさで,目玉の飛び出るような値段で売られていた一九九〇年には,それがトランプの箱よりも小さくなり,映画のチケットより安く買えるようになるとは想像できなかった。一九九五年には,インターネット・ユーザが三〇億人を超え,固有アドレスが六〇兆を超えるようになるとは想像できなかった。マイクロプロセッサ,携帯電話,インターネットはいまでこそどこにでもあるが,それぞれの草創期にこうした事態を予測した者はいなかった。それにもかかわらず,私たちはいまだに同じ失敗を繰り返している。(p344)
● クリエイティビティの扱い。
 クリエイティビティは制約を好むのだ。絵画に額縁があり,ソネットは一四行と決まっているのはこのためだ。(p306)
 グーグルでは傑出した人材が傑出した成功を収めたときには破格の報酬で報いるべきだと考えているが,二〇%プロジェクトが成功しても報酬を出すことはない。(中略)二〇%プロジェクトに対して金銭的報酬を払わないのは,単にその必要がないからだ。陳腐な言い方かもしれないが,仕事自体が報酬になる。外部からの報酬は,本質的にやりがいのある挑戦をカネを稼ぐ手段に変えてしまうため,クリエイティビティを助長するどころか阻害する要因となる(p330)
● 引用ばかりだけれども,他にもいくつか。
 顧客が自由にシステムから退出できるようにしよう。グーグルには,ユーザができるだけ簡単にグーグルのプロダクトから退出できるようにすることを任務とするチームがある。公平な競争環境で戦い,プロダクトの優位性によってユーザの支持を勝ちとりたいと考えているからだ。(p128)
 “コンセンサス・ベース”の意思決定を目指すリーダーは多いが,コンセンサスの意味を根本的に誤解している。(中略)「満場一致」という意味はないのである。コンセンサスとは全員にイエスと言わせることではなく,会社にとって最適解を共に考え,その下に結集することなのだ。(p213)
 技術者や科学者が犯しがちな過ちがある。データと優れた分析にもとづいて,賢明かつ思慮に富んだ主張をすれば,相手を説得できるはずだ,と考えるのだ。これは誤りだ。相手の行動を変えたいなら,説得力のある主張をするだけでなく,相手のハートに触れなければならない。(p224)
 iPhoneがこれだけの人気を集めているのは,それがアップルの製造する唯一のスマートフォンだからだ。次世代機の開発で問題が生じたら,その対応策が決まるまで担当チームは誰ひとりとして家に帰らない。アップルのプロダクト群がごくわずかに絞られているのは,決して偶然ではない。その一つとして,失敗は許されない。(p298)
 新しいアイデアに投資をしすぎるのは,投資が足りないのと同じぐらい問題である。あとで失敗を認めるのが難しくなるからだ。(p305)
 大企業の社員はリスクをとっても評価されず,失敗すると制裁を受ける。個人にとっての見返りが非対称なので,合理的な人間なら安全な道を選ぶ。(p338)
 私たちは大きな問題というのは,たいてい情報の問題であると見ている。つまり十分なデータとそれを処理する能力さえあれば,こんにち人類が直面するたいていの難題の解決策は見つかると考えているのだ。(p350)
 情報を生み出すのはコストがかかるが,それを再利用するコストはきわめて低い。だから,あなたが問題の解決に役立つ情報を生み出し,それを共有するためにプラットフォームに載せれば,他の多くの人々がその貴重な情報を低コスト,あるいはコストゼロで利用できるようになる。(p352)
● 巻末の「謝辞」に次のような文章が出てくる。
 パトリック・ピシェットの仕事に対する厳しさ,グーグラーらしい感受性,オレンジ色のバックパック,そして雨が降ろうが槍が降ろうが自転車通勤をやめない姿勢は,私たちに刺激を与えてくれた。(p363)
 パトリック・ピシェット氏の厳しさや感受性は,ぼくには望むべくもないが,せめて雨の日でも冬の寒い時期でも自転車通勤を継続して刺激を与える程度のことは,頑張ればできるかもしれないな。

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