2015年10月25日日曜日

2015.10.25 和田哲哉 『文房具を楽しく使う 筆記具篇』

書名 文房具を楽しく使う 筆記具篇
著者 和田哲哉
発行所 早川書房
発行年月日 2005.11.15
価格(税別) 1,600円

● 「ノート・手帳篇」に続く「筆記具篇」。「ノート・手帳篇」は8年前に読んだが,「筆記具篇」は今になった。
 「日本独自とも言えるこの文房具の文化を,さらに発展させる出来事は今後あるのだろうかと想像をめぐらせながら,本章を終えたいと思います」(p161)とは,本文の最後に登場する文章だ。
 10年前に出ているんだから,当時は,低粘度油性のジェットストリームも,消せるボールペンのフリクションも,200円万年筆のPreppyも,芯が回転するクルトガも,まだこの世になかったのかもしれない。この数年間で「出来事」はけっこう起こっているのだろうな。

● 以下にいくつか転載。 
 パソコンに入力する作業は合理的ではありますが,その過程で継続的に創造性を引き出すことは私にとっては困難なものでした。大きく行き詰まった時,いつも自分を助けてくれたのは紙とペンだったのです。(p7)
 ブログの投稿やビジネスの定型文書などあらかじめ結果が容易に想像できる対象では,いきなりキーボードで書き進んでも最後までたどり着けるものです。しかし結果が見えないストーリー(=プロジェクト)を考える場合,不確定な要素を存分に書き込める紙と筆記具に分があると思います。(p98)
 語弊を恐れず言うなら,数千円,数万円という製品の価格はデザイン料,ブランド料,貴金属材料代,職人さんの技術料,あるいは大量生産できないことによるコストが加算されたものであり,機能的な筆記の快適さと価格との関わりは案外薄いと言ってしまってもよいかもしれません。(p15)
 筆記具を上手に使える人とは筆記具を持つ角度や筆圧を製品に合わせて柔軟に変えることのできる人だと思います。(p66)
 学生の頃は,0.5ミリのシャープペンシル一辺倒だった私が歳を重ねるごとに(中略)一見して実用とは程遠い種類や規格の筆記具を使うようになりました。このことは冷静に考えますと,筆記具自体が文字を記述する道具としての主流から外れてしまっていることを示しているのです。(p98)
 筆記具が「必要な文字を書いてハイ終わり」の手段だけならば文房具店に行ってこんなにワクワクするはすがありません。(p100)
 アレルギーというほどではないものの,ギザギザに加工された部品を指の腹でさわるのが嫌いなのです。(中略)グリップ部分がツルツルの製品でも快適に筆記できるものはちゃんと存在していますから,要は基本設計次第ということです。(p110)
 皆さんの手帳の紙面を見せていただくと本当に個性的で,それこそ作品として鑑賞できそうなものもありました。ページに書かれた文字が作り上げる世界は現在の電子ツールがまだまだなしえない,紙の手帳ならではの魅力です。(p141)
 特に私にとって印象的な紙面をつくっていたかたがふたりいらっしゃいました。ひとつめはポケットサイズの手帳にルーペを使わないと読めないくらいに小さい文字を書いていた人。もうひとつはA4サイズのリーガルパッドにのびのびを大きな文字を走り書きされていた人でした。なぜ印象的であったかと言いますと,両者の一ページあたりの文字の数があまり変わらない点に気づいたからなのです。そしておふたりともご自分がお使いになっているノートに満足して長年このスタイルを続けておられ,それぞれの文字の大きさについてもごく自然な振る舞いで書かれているという事実です。(p141)
 それぞれの筆記具で書かれた文字は情報としてはいずれも正確に伝わりますが,ミクロな視点からの筆跡の美しさは万年筆のほうが数段上です。(p148)
 実際に複数の文房具店を見て歩くとそれぞれに並んでいる商品の半分から九割近くまではどのお店にも共通にあるものです。ですから各店のほんの少しの違いを見て歩くことになります。この「違い」の部分がお店の個性の見せどころになり,店主や売場担当の思い入れが見える部分であります。(p158)
 その人が実際に使っている筆記具と同じ物を欲しくなってしまったことがありました。お店に並んでいるのを見た時にはそれほどでもなかったのに,人が手にすることで製品が生き生きと見えることがありますよね。(p160)
● モレスキンユーザーのために。モレスキンユーザーの間ではすでに共通了解事項になっているのかもしれないけれど。
 フォトエッセイストのカマタスエコさんはご愛用のモールスキン・ノートにはぺんてる株式会社の「トラディオ・プラマン」のインクがぴったりであると私に教えてくださいました。なるほどこのペンならクッキリとした筆跡にもかかわらず,モールスキン特有の裏写りのほとんどない,快適な筆記が実現しました。(p106)

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